体質改善と不妊治療
体質とはいったい何のでしょうか?
辞典には「からだの性質。遺伝的素因と環境要因との相互作用によって形成される、個々人の総合的な性質。」
と書かれています。
つまり生まれついたもの、日常生活で培ったものから体質は作られるということです。
生まれついたものとは、遺伝的なことですね。
遺伝は両親から受け継いだもの。
唯一、両親から受け継ぐことができるものはDNAだけだといわれています。
私たちは、母親の卵子と父親の精子のDNAからできていますから。
遺伝的な体質は、身長や体重などの骨格、病弱、アレルギー体質など生まれたときには備わっている性質を言います。
幼少期であれば改善の余地はあるかもしれませんが、成長した大人にはどうすることもできません。
一般的に体質改善するのは、遺伝的な体質ではなく、日常生活で培ったもの、後天的な体質を改善します。
子供のころから独り立ちするまで、お母さんのごはんを食べ、身体を使った運動をして成長してきました。
その後は自分で行動の選択をして日常生活を送ってきました。
そういった日々の生活が、後天的に培った体質になります。
年齢を重ねることで良い意味でも、悪い意味でも築き上げていくものです。
もう少し具体的な話をしましょう。
歯を磨かなくても、まったく虫歯できない人いますよね。
しっかり歯を磨くのに虫歯ができてしまう人もいます。
これは唾液の問題だともいわれています。
唾液のペーハー(酸とアルカリ)に依存しているといわれていますが、唾液のペーハーはある程度体質が影響しています。
慢性的に腰痛がある人。
肩こりは気になりませんが、腰の痛みが気になります。
若いときに怪我をしたことがある。
たからその後遺症になっているのも後天的な体質。
怪我はしていないけど、体質的に、他の部位に比べ、腰が弱いのは先天的な体質。
どちらにせよ、疲れや使い過ぎなどによりどうしても弱いところに反応が出やすくなります。
運動や食事にも気を使っているにもかかわらず、太っている人。
甲状腺や肝臓などの働きが弱いのかもしれませんし、筋肉量が少ないのかもしれません。
これも先天的、後天的に太りやすい体質ということになります。
これは妊娠についても同じことが言えるのではないでしょうか?
どんなに不摂生をしていても妊娠する人はいます。
ガンガン酒を飲み、タバコを吸って、夜更かしして・・・それでも妊娠するの?と言う人はいますね。
これは体質的に妊娠に関わる卵巣や子宮などが強いのかもしれません。
また、28歳ごろ自然妊娠できても、35歳で妊活を始めてもなかなか妊娠しない場合もあります。
若いころは体質的に問題があっても何とかなることだってあります。
しかし、1度の出産と時間の経過によってさらに体質に変化が起こっても不思議ではありません。
先天的な体質に関しては、遺伝情報に組み込まれているため、仕方ないこともありますが、後天的な場合はまだ改善の余地があります。
先天的な体質は、ホルモン系、つまりホルモンを分泌する臓器と受ける臓器のトラブルがあげられます。
細かい話になりますが、ホルモンを作るには材料があり、その材料を作り出すのも臓器なので、臓器の調子が悪いと材料不足もあるでしょう。
また子宮後屈や卵管、血管の太さなどの構造的な問題もあるでしょう。
さらに早発閉経など生まれたときに卵子の数が少ないことも先天的な体質です。
こういった場合は、病院でホルモンを補充したり、体外受精をしたり、卵子提供、代理母出産などの方法があるにはあります。
後天的な体質に関してはいろいろありますね。
誕生してからの生活環境です。
食生活、住環境、教育環境、運動環境、医療環境、人間関係・・・。
どれも大切ですし、避けて通ることもできません。
ご本人、そして家族、友人など自分だけではどうにもならないことも含まれています。
さてもっとも基本的なものといえば食生活ではないでしょうか?
食事は私たちの身体を作る大切なもの。
母乳、ミルク、離乳食から始まり、朝ごはん、昼ご飯、夕ご飯、間食を含めれば、1年で1000回以上も繰り返します。
それを30年続ければ30000回と果てしない数です。
食事が体質に影響を与えないはずはありません。
一人暮らしを始めるまでは、ほぼ母親の作る食事、学校給食で生活し、その後は自由気ままに飲んだり食べたりするでしょう。
いつも作ってもらい、家に帰ればごはんがある環境とは違い、自分で作らなくてはいけないと思うと億劫になりますね。
身体に悪いと思いながらも、ファストフード、コンビニ、総菜で済ませてしまうことも多いのではないでしょうか?
私が18歳で一人暮らししたときは、パスタを大量にゆでて、ケチャップつけて食べていました。
こんな食事でも身体が作られてしまうというのだから質が悪い。
たとえば脂肪ですが、良質な脂肪であれば良いのですが、悪い油もまた吸収され、細胞の一部、ホルモンの一部、さらには蓄積されていると思うとぞっとします。
脂肪は尿中には排泄されず、蓄積してしまうのです。
次は住環境です。
昔は今のような密度の高い建物ではなく、冷暖房は効きにくく、寒暖差のトラブルが多かったでしょう。
トイレも和式だったし、よくあの姿勢で長時間居られたものです・・・。
畳の家も多かったのではないでしょうか。
するとイスより座布団、ベッドより布団ではなったでしょうか。
バリアフリーの家も増えましたが、昔は段差だらけ・・・足腰に負担が多かったでしょうね。
ただ悪い負担ばかりではなく、身体にとっては有効な負担でもあったでしょう。
トイレも和式が良いともいわれていますし・・・。
住環境はずいぶんと便利になり、進歩しましたが人間の身体自体はまったく進歩はしていません。
住環境の変化は身体にとってストレスとなり、またストレスではなくなり、むしろ身体に重要な負荷がなくなる原因になります。
教育環境は・・・住んでいるところでずいぶん違いそうですね。
長い人生を考え、人類が進歩するには勉強が大切なのは言うまでもありません。
ただし、教育格差という言葉があるように学びたくても学べない人もいるということです。
教育にはお金がかかるという事実。
さらに勉強できる机や本、集中できる環境なども大切です。
一般的には幼稚園、小学校、中学校、高校、大学があり、さらに塾に通う機会があります。
勉強は忍耐力が大切で、精神的な要因が大きく影響をします。
勉強ができないという悩みから引きこもりになるケースもあります。
またいじめや体罰なども教育環境を考える上では必要です。
成長期に受けたいじめや体罰はトラウマになってしまうことも多いでしょう。
いじめの性質は変わってもいじめや体罰は昔からありましたが、その時どう対処していたのでしょうか?
私もいじめられた経験がありますが、その時は相手を叩きのめして解決しました。
上級生からのいじめは耐えるしかありませんでしたが・・・。
体罰というか、武道系の部活だったので竹刀や木刀でたたかれること、往復ビンタなどは日常茶飯事でしたね。
今の時代には合いませんが、そんな時代で強く育ったともいえるかもしれません。
学校や登下校など安全性も考えないといけません。
地震などの天災、交通事故や変質者による人災などこれまた、精神と肉体に十分な影響力を示すでしょう。
運動環境は、機会、スペース、友人なども関わってきます。
住んでいる地域によって盛んな運動があることも、友人がやっているので一緒に始めるなどの動機があるでしょう。
行っている運動によって使用する神経や筋肉に差があるのは言うまでもありません。
運動神経の良し悪しは、シナプスと神経のつなぎ方がスムーズかどうかで決まるようです。
サッカーをしていれば、足と脳のつながりが発達し、バレーボールをしていれば、手と脳のつながりが発達するでしょう。
野球やゴルフをしている人は、突然エアー素振りをし始める人がいます。
あれはまさに運動環境が作り出した賜物です。
利き手や利き足などに差が起こり、怪我などを作る機会も増えてきます。
良い意味でのストレスと怪我や後遺症などのストレスが考えられます。
医療環境は・・・身近に病院があるか、病院に通う習慣があるのか、病気や怪我をよくするか、健康への関心が高いかなど個人差が多い気がします。
小さいころは親が面倒をみてくれるので、健康は親任せでした。
親が子供の健康を守っているのです。
大人になると、病院へは自分で探し、通院するかしないか判断しなくてはなりません。
頭痛や腰痛などの痛みは薬局の痛み止めで止めてしまうかもしれません。
大きな病気が潜んでいるかもしれない場合は怖いですね。
人間ドックや健康診断もまたするかどうかは人それぞれですし。
患った病気が慢性化することも、古傷になることもあるでしょう。
これもまた体質の一部となってきますね。
人間関係って、両親、兄弟、友人、知人など近いところから遠いところまでたくさんいます。
無人島にでも住んでいない限り、人と関わらないという選択肢はありません。
自分の考えに近い人、同じような境遇の人、少しだけ共感できる、共通の趣味がある、同級生、同じ職場など関わり方は色々ですね。
同じ趣味を共有したり、知らなかったことを知るきっかけになったり、楽しいこと、うれしいことを共有することもあるでしょう。
悪いことを共有する、つらいことを押し付けられるなど悪い面もありますね。
これもまた自分たちの生き方に関わることですので、性格形成、体質形成に関わっていくことでしょう。
こうやって考えてみると体質の奥深さを感じませんか?
成長の過程すべてに体質形成チャンスがあり、また自分で作り出すものと、周りから作られるものがあります。
ここまで複雑だと家族でも同じ体質の人を見つけるのは難しそうです。
さて、ここから具体的に不妊と体質について考えていきます。
遺伝的な体質、つまり全身の中で生まれながらに子宮、卵巣、ホルモン分泌臓器が弱い人がいることは考えられます。
最近ニュースにもなっていた、生まれながらにして子宮がない人もいますが、少し構造的に、機能的に弱い方もいます。
「子宮移植」とは?
私のところにも来院されますが、「早発閉経」の方もそういったケースなのではないでしょうか。
後天的な体質は、時間をかけて、いろいろな出来事を受けて培っていくものです。
まさに人生そのものですね。
女性アスリートで聞く話ですが、大会と月経が重なるといけないから、「生理を止めた」とか、一般的な女性でも温泉に行くから「生理を止めた」とか聞きます。
1回だけのことだとは考えられないので、定期的に月経を止めるのでしょうね。
当院に来院している方で、ピルを飲み過ぎて「子宮が小さくなった」という方がいらっしゃいます。
これはもはや退化しているとしか考えられません。
以前に紹介した、女性ホルモンに影響を与える「外来性女性ホルモン」もまた口から毎日、少量ずつ入り、それが積み重なることで子宮や卵巣、乳腺などに影響を与えます。
さらにホルモン分泌異常へと導くでしょう。
ストレスも同様ですね。
あまりにも大きなストレスでホルモンバランスが崩れるケース、小さなストレスの積み重ねでホルモンバランスが崩れるケースがあるでしょう。
これではいざ妊娠しようにも、良い結果が出ないかもしれません。
ミトコンドリアと卵子の関係で、ミトコンドリアの活性が低い人がいます。
昨日今日ではなく、中長期的に日々の活動量が少ない、そして栄養のバランスが悪い人なのでしょう。
これもまた日々の積み重ね。
あげればどれもが、妊娠の足かせになるだろうということは想像できます。
しかも厄介なのは、生まれつきの個体差と日々の生活スタイルが千差万別であること、妊娠をしようとするタイミングがみんな違うことですね。
さらに、ご主人の状態も加わるわけですので、明確な解結方法を見出すのがあまりにも難しいのです。
妊娠のメカニズムはわかっているようでわかっていない。
体外受精の成功率を30%だとすると、偶然性を含めて、解明できていることは30%と解釈できる。
残りの70%以上は不明瞭ということになります。
つまり、これをすると不妊になるという絶対的な原因がない(原因かどうかも分からない)。
これをすると妊娠するという素晴らしい魔法のようなものもない。
不明瞭な70%を限りなく少なくすることが、妊娠率アップの秘訣であり、そのために日々培ってきた後天的な体質を改め、修復する必要があります。
一朝一夕では改善することが難しいですが、ある程度の期間(約半年)徹底的に行うことで必ずや体質改善はできます。
ちなみに一朝一夕という言葉は、東洋医学の重要な書物である「易経」にある言葉だとか・・・。
体質改善の重要性を少しはわかっていただけたでしょうか?
体質改善には、体質を知ることから始めましょう!!!
私たちは皆様の体質をしっかり把握し、そのうえで体質改善のアドバイスと鍼灸を行っていきます!!!